我無ちゃんねる 〜ニュースなび〜

放送日 2013年9月10日(火) 0:40〜 1:25　NHK総合

■　オープニング
大阪市内にある朝鮮学校には、在日韓国朝鮮人の子供たち50人が通っている。この1年で、長年続けられてきた大阪府と大阪市からの補助金が打ち切られた。
拉致問題などを引き起こした北朝鮮との関係が問題とされたからである。
この学校では、前の年に670万円支給されていた補助金がなくなり、存続が危ぶまれている。在日の人たちを中傷するデモも頻発している。
日本で生まれ育っていく在日の子どもたち、かつてない厳しさと向き合う朝鮮学校の日々を追った。

■　いま、“在日”として生きる〜大阪・朝鮮学校の1年〜
在日朝鮮人が多く暮らす大阪・東成区。この住宅街の一角に中大阪朝鮮初級学校がある。この学校は去年4月、北朝鮮との関係を問題視され大阪市と大阪府から補助金が打ち切られたばかりだった。授業は朝鮮語で行われているが、この日は日本の選挙の仕組みなどが教えられていた。キム・チョル校長は、日本の教育過程に準ずる内容を扱いながら、民族的な素養を身につける学校であると説明した。

去年6月、オ・リファさんが受け持つ中大阪朝鮮初級学校の6年生のクラスが日本の学校と交流を持つこととなった。生徒の1人であるキム・スヒさんは朝鮮人であることに引け目を感じ、この交流イベントに不安を抱いていた。交流イベントは日本と朝鮮学校の子どもたちが混ざってチームを作りゲームをするなど、和気あいあいと行われ、キム・スヒさんの顔からも笑みがこぼれた。

補助金見直しの発端は3年前、高校の授業料を無償化する対象に朝鮮学校を含めるかどうか議論になったのがきかっけだった。去年の7月から、教師たちは大阪府・大阪市からの補助金の復活を訴えようと街頭に立っている。しかし、ビラを受け取ってくれる人は少なく、時には罵声を浴びせられることもあった。

ソン・ウォンテくんは"日本に生まれたのに何故自分は朝鮮人なのか”と真剣に考えるようになったという。ウォンテくんは父に自身のルーツについて教わった。チェジュ島で生活ができず、仕事を求めて日本にやって来たウォンテくんの祖父。朝鮮戦争などがあったことから、ウォンテくんの祖父は日本に留まることとなった。ウォンテくんは、「ぼくたちは朝鮮人ですから、朝鮮人はダメだという雰囲気が日本のなかに根付いているのが嫌です。ランクが下なのかな、そんなことないけどなぜなるのかなと思う」と語った。

朝鮮学校は、在日の人たちが集まる場にもなっている。この日は、年に一度の納涼大会が行われた。オ・リファさんは、在日として生きていく子どもたちにとって少しでも生きやすい環境を与えてあげたいと感じている。学校を存続させるため、自分達の歴史をもっと日本人に知ってもらうことが出来ないかと保護者や卒業生を中心に学校の歴史を伝える展示会が開かれた。展示会では困窮していた朝鮮学校に初めに手を差し伸べたのは北朝鮮であることなどが説明された。

去年12月、学校に緊張が走った。北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルを発射したというニュースが流れた為である。その2ヶ月後、北朝鮮が地下核実験を実施したというニュースが流れ、朝鮮学校の教師らは生徒の安全を考え、登下校に付き添うこととなった。その2週間後、大阪・鶴橋のコリアタウンは喧騒に包まれた。デモの現場に居合わせたオ・リファさんは、子どもたちが日本の社会に心を閉ざしてしまわないかと案じた。

誇りを持って生きて欲しいとオ・リファさんらは卒業間近の生徒らに、ある人物を紹介した。朝鮮半島が日本の統治下にあった時代、日本人代表としてベルリン五輪でメダルを獲得したソン・ギジョン選手。そして卒業式を迎え、、オ・リファさんは「みなさんはかけがえのない存在です。社会の状況は厳しいですが、ひとりひとりが黄金のような宝物です。」と子どもたちに伝えた。

2013年9月、学校のことを1人でも多くの日本人に知ってもらいたい、その思いから続けてきた一般公開の授業。この日は300人が足を運んだ。展示室に興味を持った人も多く、日本人から「仲良く助け合おうね」など多くのメッセージが黒板に書き込まれていた。
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/nhk/39255/667772/