我無ちゃんねる 〜ニュースなび〜

6月15日、お隣の国・韓国で、注目の裁判が再び動き出しました。

盗難被害で日本の寺から韓国に持ち込まれた仏像の所有権は、どちらにあるのか？

韓国の寺は、驚きの主張を続けています。

韓国・仁川空港。

◆記者
「住職が韓国に到着しました」

14日、「ある特別な思い」を抱えた1人の日本人がソウル入りしました。

長崎県対馬市にある観音寺の住職・田中節竜さんです。

目的は「10年前から続く問題を解決」することです。

◆観音寺　田中節竜住職
「以前から申しているのが、所有権は我々観音寺側にあるということ」

長崎県対馬市の田中住職が所有権を主張するのは、県の有形文化財『観世音菩薩坐像』。

この仏像の所有を巡って、日韓の寺同士が10年近く争いを続けています。

ことの発端は、2012年10月。

田中住職の寺から『観世音菩薩坐像』が何者かに盗まれる事件が起きました。

盗まれた仏像は3ヶ月後に韓国で見つかり、現地警察が窃盗グループを逮捕。

当然、仏像は、返還されるものと見られていました。

しかしー

韓国の寺、浮石寺の住職などが「もともとは自分の寺にあった仏像だ」と所有権を主張。

600年以上前の室町時代などに活動していた日本の海賊集団『倭寇』に略奪されたものとして、日本への返還差し止めを訴えたのです。

そして、2016年4月、浮石寺側は韓国政府が保管している仏像の引き渡しを求めて提訴。

その判決は…

◆韓国の地方裁判所
「仏像は浮石寺のものと十分推定できる」
「過去に正常ではない方法で対馬に保管されていた」

韓国の地方裁判所は、仏像を浮石寺に引き渡すよう命じたのです。

◆浮石寺　ウォヌ前住職
「不法流出で（日本に）渡った。文化財返還のきっかけになってほしい」

この判決に、日本政府はー

2017年―
◆菅官房長官（当時）
「極めて残念だと思いますし、速やかに仏像が日本に返還されるよう韓国政府に適切な対応を求めていきたい」

このまま韓国の浮石寺に引き渡されるかと思われましたが、韓国政府が控訴。

仏像は、韓国政府が保管したまま裁判が継続される泥沼の事態となりました。

仏像を『自分の寺の物』だという韓国の寺の住職は、一体どのような主張をしているのか？

◆川崎キャスター
「こうして山全体が見渡せるほどに山の上の方まで登ってきました、ここにあるのが渦中の浮石寺です」

5年前、川崎キャスターが現地入りして、渦中の浮石寺を直撃取材していました。

◆川崎キャスター
「日本のメディアですが、住職はいますか？ウォヌ住職は」

◆寺の関係者
「住職はいません」
Ｑ今日は帰ってこないですか？
「はい」

諦めかけたそのとき…

いないはずの住職の姿が…

◆川崎キャスター
「住職、ちょっとお話聞けますか？」

それから1時間後、住職が建物から出てきました。

◆川崎キャスター
「ちょっと住職！主張したいことがあるんでしょう？ちゃんとカメラの前で話してくださいよ」

「……」

川崎キャスターの問いに、「完全黙秘」を貫く住職。

ところが、川崎キャスターがマイクを向け続けると、次第に口を開き始めました。

◆浮石寺　ウォヌ前住職
「こんなことしたって意味ないですよ。日本の観音寺に対して『あなた達は間違った情報を提供している、矛盾している』と問いただすべきでしょう。それがフェアなメディアじゃないですか？もうここまでにして観音寺に戻って取材してください」

それでも川崎キャスターは、粘り強く住職の主張を聞こうと取材します。

◆川崎キャスター
「住職、改めて聞きますが、5年前の窃盗事件と数百年前の歴史的出来事を同列に比べるのは、全く妥当性がないと思います。法治国家の常識を疑いますが、どうですか？」

◆浮石寺　ウォヌ前住職
「5年前の韓国の窃盗団と600年前に盗んだ日本は同罪ですよ。今回はその問題ではなく、本当の持ち主は誰かという話です。窃盗団は刑務所に入ってるでしょ？処罰を受けているんです。でも同じく盗んだ日本は処罰を受けてない、日本は謝罪したこともない、図々しいのは日本です」

現代の韓国の窃盗団と600年前の倭寇は同罪として、仏像は元々あった浮石寺に戻ってくるべきだという主張でした。

その後、仏像を巡る問題は平行線のまま時間だけが過ぎていきました。

そして、対馬市の寺から仏像が盗まれてから10年、新たな動きが…

2022年6月14日―

Ｑ裁判への参加を決めた理由は？
◆観音寺　田中節竜住職
「参加しなかった場合は結審してしまうということなので、負担は大きかったが参加する決意をした。粛々と、き然と対応していく」

14日、韓国入りした観音寺の田中住職。

日本への返還を主張する韓国政府側の『補助参加人』として、15日、テジョン高裁で開かれた裁判に初めて参加しました。

◆記者
「対馬の仏像盗難からおよそ10年、韓国では現在も仏像の所有権を巡る裁判が続いています」

日本の田中住職は韓国の寺の前住職と法廷で初めて対峙し、自らの主張を直接訴えました。

◆観音寺　田中節竜住職
「韓国の寺側は法的な意味でも所有権の立証が不十分。取得時効が成立し、取得権は観音寺にある」

田中住職は600年前に盗まれたという話は、立証が不十分で、時効が成立していると主張しました。

裁判終了後ー

◆観音寺　田中節竜住職
「檀家の心のよりどころとして長く大切に守ってきたと。所有権は我々にあると強く主張していきました。言いたいことはすべて申しあげたので、穏やかな対馬の海のような感じですね」

韓国の寺の前住職は…

◆浮石寺　ウォヌ前住職
「まず観音側の参加に対して感謝申し上げる。そちら側の主張を十分に聞いたから検討を充分にして、法律的な準備をして次の裁判に臨むようにする」

果たして、日本に仏像が戻ってくるのでしょうか？

次の裁判は、8月に行われる予定です。

（※動画は配信用に再編集）